第22章 息抜き
それは数日前のこと。
いつものようにアトリエにいらっしゃっていた兵長が唐突に言った。
「ラウラよ、たまにはガキらしく遊べ」
「え?」
最高に楽しく絵で遊んでいた私は、兵長の言葉に思わずポカンと口を開ける。
「…そういう事じゃねぇ。外に出ろ、という意味だ。お前、ここのところずっと部屋に篭もりきりじゃねぇか」
「あ…そう言えば…」
食事や訓練、その他の雑務など、必要最低限の用事を済ませるために部屋を出ることはあっても、いわゆる「息抜き」のようにして外出することは無かった。
「明後日は俺に付き合え。いいな?」
そういう経緯で、有無を言わさずリヴァイ兵長に同行することになっていたのだ。
絵に没頭していたので完全に時間の感覚を失っていたが、窓の外が明るいということはすでに夜が明けているのだろう。
…兵長との待ち合わせに遅れることは絶対に許されない。
慌てて身支度を整えて調査兵団の外門まで走っていくと、そこにはすでに腕組みをしたリヴァイ兵長が立っていた。
さぁっと血の気が引いて、私は身体を90度の角度に勢いよく折り曲げる。
「もっ、申し訳ありませんっ!お待たせしてしまい…」
だが、兵長は特に怒ることもなく、それどころか少し微笑むような表情をしていたので、私は別の意味で喫驚したのだった。