第21章 依頼
いつも近くに兵長がいる、という意味で考えると、私もペトラと似たような環境にいるのかもしれない。
だけど兵長に対して恋愛感情を抱いているかと言われると、…多分それはないだろう。
もちろん私も兵長のことは心の底から尊敬しているし、不器用な方法でだけど兵士たちを思いやってくれるところが大好きだ。私の絵を熱心に見てくださるのも、本当にありがたいと感じている。
正直なところ、そんな風に考えたこともなかったので分からないのだ。多分無意識のうちに、「私のような者が兵長に好意を抱くなど身の程知らずもいいところだ。全く釣り合わない。考えることすら恐れ多い」とか思っていたのだろう。
今、こうやって改めて考えてみてそれに気がついた。
でもペトラは違う。容姿は文句なしの美形だし、兵士としての実力も十分だ。まだ若手兵士の部類に入るものの、特別作戦班の一員としてメキメキと頭角を現してきている。
私が考えうる限り、調査兵団内で一番兵長と釣り合いが取れているのはペトラだと思う。
だから、その彼女が兵長に好意を抱いているというのなら、私にできることは何だってしてあげたい。彼女が望むなら、いつだって協力する。
「ペトラ、あのさ…」
そんなことを考えていたら勝手に気持ちが昂ぶってきてしまって、思わず「もしかして兵長のこと好きなの?」と言いそうになった。だけどその先の言葉を続ける前に、はっと気がついた。
こういうデリケートなことは本人から言い出さないかぎり触れない方がいいんじゃないか、と。今私が何か言ったとしても、それは「余計なお世話」になってしまうかもしれない。