第21章 依頼
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団長室を出て廊下を歩いていると、ばったりペトラと行きあった。
「あ!ラウラ、ちょうどアトリエに行こうと思ってたところだったの。教本の挿絵見たよ!本当にすごいね。あの教本で勉強できる子たちは幸せだと思う」
「ありがとう、ペトラ。でも、ハンジ分隊長たちの研究の成果だよ。私なんて、まだまだ言われた絵を描いてるだけだから」
「それでも、言われた通りに描けるってすごいことだと思うけどな」
ペトラはいつもこうやって私のことを褒めて認めてくれる。そこには何の嘘偽りも感じられなくて、彼女のまっすぐな性格がよく感じられる。いつも照れくさくなってしまうけれど、ペトラの言葉にいつもどれだけ励まされていることか。
私たちはアトリエに向かって、並んで廊下を歩いて行った。彼女はこうやってちょこちょことアトリエを訪れてくれるのだ。
ただ彼女以外にも私のアトリエに来る人は結構いて、一番の常連はリヴァイ兵長だったが、ナナバさんやゲルガーさん、オルオ、ハンジ分隊長にモブリット副長、エルドさんやグンタさんなど、実に様々な人が来てくれる。
何となく入りやすいからなのか、それともみんな絵に興味を持ってくれているからなのか分からないけど、とにかく日中は誰かしらが来訪しているという状態だった。
アトリエの扉を開けると、すでに室内には先客がいた。
「リヴァイ兵長、いらしていたのですか」
すっかり定位置になっている窓際の椅子に腰掛けて本を読んでいた兵長に、私は特に驚くこともなく挨拶をした。兵長がこの部屋にいることは、すっかり習慣化していることだからだ。
「勝手に入らせてもらった」
兵長は読んでいた本をパタリと閉じると、こちらに顔を向けた。相変わらず視線は鋭いけど、眉間にシワは寄っていない。今日は機嫌が良いのだろう。
兵長はポーカーフェイスに見えて、意外と感情が表情に出やすい。慣れないうちは分かりにくいけれど、一度慣れてしまえば分かりやすいくらいだ。