第20章 阿呆
「えっ、ちょっ、ラウラさん?!どうしたんですか?!」
ボタボタと、まるでコップから水があふれるようにして涙を流し始めた私を見て、ミアがびっくりしてオロオロとし始めた。
「どこか痛いんですか?!」
声もあげずに涙を流し続けている私に、ヘルゲもミアも眉を下げて右往左往した。
「ご、ごめ…」
急に泣いたりしてごめん、と言おうとしたけれど、身体全体が震えているみたいになって、上手く声を出すことができない。
と、そこで、ふいに後ろから声がした。
「おいガキども、何を騒いでいやがる」
ビクッと肩を揺らして振り返れば、そこには眉間にシワを寄せたリヴァイ兵長の姿があった。
「へ、兵長っ!お疲れ様ですっ!」
ヘルゲとミアは、青い顔をしてバッと敬礼をした。
二人の緊張した表情を見て、「そう言えば、新兵が兵長と話すことなんて普通はあまり無いことだった」と、今更ながら思った。
私はグシグシと涙を拭って、二人と同じように敬礼する。
「…お前らは、ヘルゲとミアだったな。なんだ?コイツを虐めてやがったのか?」
「と、とんでもありませんっ!!私たちはただ、教本の感想を伝えたくて…」
二人の言葉を聞いてから、チラリと兵長は私の顔を見る。
「だ、そうだ。ありがてぇ話じゃねぇか。なのに、お前は何でベソかいてんだ?」
「…っ!!」
本当に、兵長の言う通りだ。私は…今まで一体何を勘違いしていたんだろう。しかも4年以上も…。
「…もういい。しゃべってるヒマがあるのなら、掃除でもしてろ」
「はっ!!」
二人は再度敬礼をすると、慌てて去って行った。
ただ、去り際に小さな声で「ラウラさん、また後で」と言い残していってくれた。