第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
VIPルームから店のほうに戻ると
お客さんはもう誰もいなくて
数人のスタッフが片づけをしていた。
いつもと変わらない感じに
ようやくホッとして。
俺も急いでそれに加わろうとして
スタイリングチェアに散った髪を
ハケで払い始めた。
なんとなく…
なんとなくザワザワする胸を
どうか誰にも気づかれませんように。
…という祈りも虚しく。
「なぁなぁ…」
そばで床を履いていた二宮さんが
ニヤニヤしながら近づいてくるから
「なん…すか…」
嫌な予感しかしなくて(。ー`ωー)
おもくそ素っ気ない態度で背中を向けたら。
「それさ…違うハケじゃね?」
…へ?と思ってよくよく見ると。
あ、やべ…
これ…顔に付いた髪を払う用じゃん!
お客さんの肌に直接触れるもんだからと
安月給をやりくりして買った
兎の毛でできてる上等のヤツだよ~…
なんでコレ使ってんだよ、俺…(。ー`ωー)
「すいません…」
小さく詫びてから
急いで近くのワゴンからイス用のハケを取って
掃除を再開するけれど。
そんだけでこの人が
おとなしく離れてくれるはずもなく……
「どしちゃった~?
なんかドキドキすることでも…あった(* ̄∇ ̄)?」
このさ…(。ー`ωー)
含みをもたせるような
いやーな誘導の仕方……
…さすがですよ…
「別に……なんもないす」
「え~~…ホントにぃ?」
ホントです!
…と答えようとした俺の横を
カラカラとワゴンを押す翔さんが通りかかる。
「智~(*゚∀゚*)どんな魔法を使ったんだ?」
「はい?」
「相葉さんが『これからずっと
シャンプーは智くんにお願いする』ってよ?」
「………」
「『夢のように気持ちよかった』んだってさ~ww
今度俺のシャンプーもしてくれよ~(*^^*)♪」
ポンポンと笑顔で俺の肩を叩いて
翔さんはVIPルームに向かっていった。
「ほぉぉーう…(* ̄∇ ̄)?」
意味ありげな視線を残して
掃除に戻る二宮さんを見ながら
俺の頭は…スパーク中…(。ー`ωー)
それは…
大好きな翔さんの髪を
シャンプーさせてもらえるかもしれないから?
いや………
違う…気がする………