第4章 琥珀色の恋【A×N】
リビングの入り口で見つめ合う俺たち…
「……痛いよ…」
「えっ?あ、ああ、ごめ…」
慌てて離した手首を、ニノは少し擦った。
「ニノ…俺さ…」
「お茶!お茶、冷めるよ!早く食べようよ…」
「……」
ニノは俺にいつもの笑みをくれて、
部屋を出て行き、セーターを置いて直ぐに戻ってきた。
俺の横をさっと通り過ぎると、
ラグにちょこんと座って俺を振り返った。
「おいでよ、早く~」
「あ、うん、うん」
「あ~、旨い!想像以上のプルプル~、
あんまり、甘くないのもいいよね!」
何事もなっかたかのように、いつものニノは、
俺が持ってきた、口実の練り菓子を頬張って、
嬉しそうに笑った。
そう。
いつもの『二宮和也』の顔で…
それが逆に、俺の胸を痛くするんだ。
ほんの少しの期待、
……もしかしたら、こいつも……
っていう、淡い想い。
それがいつも、ニノのこんな顔を見る度に、打ち消されてきたんだ。
だけどさ………
誤魔化して、目を反らせ続けたこと。
たったひとつ、
一番叶えたくて、でも踏み出せないから封印してきた俺の気持ち……
……そうだよ。
口実だよ?ニノに会いに来るための…
仕事の現場じゃなくて、
会いたかったんだ…ふたりで……
確かめたかったんだ。
ニノの、気持ち……
「あ〜、美味しかったよね。
もう一個食べたいな〜、っていうところが、またいいのかもね(^^)」
「うん………」
「…………」
「………」
「あ、今度はコーヒーにする?
それとも、ビールがいいか…」
「ニノ」
立ち上がろうとするニノを、
俺の低い声が制止した。
そのままの体勢で俺を見るニノ……
「座って。話があるんだ……」
少し躊躇いの色を浮かべた目を伏せて、
ニノはまた、ラグに座った。
大きく息を吸い込んで、
腹に力を入れて、ゆっくりと口を開く。
「ニノ……俺さ……」