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10月と君と秋風と

第2章 10月と君と秋風と another story


中地君とは駅でお別れだ。階段を降りれば夕日さえ射し込まない。
「ばいばい佐久間さん」
「ばいばい中地君」
中地君の左手で紙袋が揺れる。それが私のもとにくることはない。
ねえ、中地君、本当に帰っちゃうの?ねえ、待って―

いかないでよ

「あ…っ、中地君!」
自分から声をかけたくせに、私は振り返った中地君を見ることができなかった。
今、言ったところで何になる?中地君を困らせるだけだ。
好きな人には、その人が想う好きな人と一緒に、いてほしい。
ならば、私がすべきことは一つ。
中地君と杏奈ちゃんのことを―応援することだ。
「なーにー、佐久間さーん」
私はとびきりの笑顔を貼り付けて、ぱっと顔を上げる。
「なんでもなーい!今日は、楽しかったー!ありがとう!また明日ねー!」
中地君の返事を待たずに、背を向けて走り出す。
ひどい顔してるところなんて、見られたくないから。
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