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10月と君と秋風と

第2章 10月と君と秋風と another story


「…じゃあ、これにする」
中地君がそう言った時、「あぁ、やっぱりか」と思ったのが正直なところだった。彼が選んだのはピンクのハンカチ。…本当に杏奈ちゃんのこと、好きなんだね。
「いいと思うな!これ、今流行ってるパステルカラーが使われてるし、花の刺繍もお洒落だよね!」
流行りが今いちピンときていないらしい中地君はふーんと言っていたけれど、私がいいと言ったので買ってくることにしたらしい。それでいいのか中地君。
外で会計を待っている間、中地君をぼうっと眺めていた。
ねぇ、中地君。
私のこと、自分の買い物でもないのに付き合ってくれたイイヤツ、なんて思ってないよね?私だって、そんなにお人好しじゃないんだよ。誰でもいいってわけじゃない。
中地君だから、なんだけど―。
多分君のことなんだから、気付いてないんだろうなあなんて考えて、私は一人苦笑いした。

結局私の世世話焼きはとどまるところを知らず、気がついた時にはハンカチは綺麗にラッピングされた後だった。
佐久間さんは自分のものを何も買っていないがいいのかと聞かれ、そういえばお昼以外はお財布を取り出していないことに気付いた。いや、本当は―、もしかしたら無意識に買わないようにしていたのかもしれない。今日のことはきっと、私にとっていい思い出にはならないだろう。そんな日のことを思い出させる品が残っていたら、きっと困るのは私だ。
「うーん、たまたま欲しいもの、無かったんだ」
中地君はふーんそうなんだとだけ答え、それ以上は聞いてこなかった。
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