第35章 第三十四章
「…………」
その時のワンシーンを思いだして、じっと一松の目を見る。
「なに?そんなにじっと見て」
「一松、もしかして私がモンスターに襲われてる時に助けてくれた事あった?!」
「………さぁ、どうでしょう」
だーっ、またはぐらかす!!!
でも一松の身なりを見るときっとそうだ。
あの時は、姿は確認出来なくって矢しか見てなかったけど……思い返すと今床に落ちている矢とあの時の矢が同じだ。
という事は、本当に最初の最初から一松は私達を見張っていたんだ。
魔王軍に私達の動向を垂れ流しにされたのはものすっっっっっごく許せないとは思うんだけど、その半面、私達PTの隙をついて攻撃する事だって出来たハズだ。
逆に私なんか助けられてるしね。
「スパイ行動をしてた事は許せないけど、今もこの前も助けてくれてありがとう一松」
ゲームシステム上、仕方ない部分もあるだろう。
こうやってかなり遅いけど私の前に現れてくれたし、壺から助けてくれたし、お咎めはなしにしてやろう……って偉そうかな。
「あ、そう言えば一松はどうしてこの館の中にいたの?やっぱり私達を見張るため?」
ふと思い返して一松に質問すると、一松らしい返事が返ってくる。
「ここにいたのは猫が沢山集まるって聞いたから。バーチャル世界の猫も見て見たかったし。可愛かった」
「はは、なるほどね。ある意味、一松にとってもここは¨籠りの館¨だったと」
ここに入る前に猫の声が聞こえたもんね、きっといっぱい集まっているんだろう。
「あ、それとコレ」
一松がポケットから袋を取り出し私に寄越す。
ちょっとずしっとした重みを感じるがなんだろうか。
「なにこれ、開けていいの?」
「いいよ、猫が持ってたけどくれたから」