第35章 第三十四章
一松に対して攻撃意識はないけど今までの旅を考えると条件反射というか。
一松は六つ子の中ではまだマトモな方だけど、それでも六つ子の中の一人なのだ。
記憶はあれど、私に敵意がある、ないはまだ言ってきていないので余計に緊張してしまう。
「あぁ、警戒しないでいいよ。ナス子をどうこうしようとしてる訳じゃないから。ていうか……そろそろ出てきた方がいいかなって思って出てきた訳だし。仕留めようと思えばいつでも仕留められたのにそれをしなかったって事は、俺が勇者一行に手を出す気はなかったって事もわかるでしょ」
うーん、確かに。
見るからに、私に攻撃を仕掛けてこようとはしてないし、逆に両手を挙げている一松はいつものボソボソな低い声でそう言った。
「でも、魔王の部下なんだよね?」
「そう。でもただ配役として与えられただけ。もっと細かく言うと魔王って言うかトト子ちゃんの配下だけど……トト子ちゃんはモンスターでも可愛い」
「それは知ってる」
「で、トト子ちゃんに勇者一行を見張るよう言われてたから今まで出てこなかったんだよ、わかる?」
「う、うん。でも一松……私が言うのも変だけど何で攻撃してこないの?私達を討伐しようとかはしないって事?」
「そんな面倒な事しないよ。俺は見張りを命じられただけで討伐して来いなんて言われてないから。……まぁ、勇者一行の情報は本部に垂れ流してたけどね」
あれ?それって……確か誰か言ってなかったっけ?
トト子の配下に情報通なヤツがいて、そいつが私達の居場所を報告してるって…………。
「あれって一松の事だったのか!!」
突然私が納得して大声をだしたものだから一松がビクリと声に反応して肩を震わせた。
そういえば旅の初期あたりの事だったろうか、私がまだおそ松とカラ松と3人パーティを組んでいた時、変な草のモンスターに襲われた時があった。
あれって、弓……だったよね。
確か矢が飛んできて助けてもらったんだった。