第35章 第三十四章
普通に会話の出来る一松にこっちが動揺してしまう。
「だ、だって今までの流れだと十四松以外の皆はこの世界に入ってから私の事忘れちゃっててそれで……」
混乱して頭に手を置く私を顔色一つ変えないまま見ている一松。
一応ちゃんと話を聞いてくれているようで ふーん なんて返事が返って来る。
「どうして一松には記憶があるのか逆に気になっちゃうんだけど……」
やはり本物の一松ではないのだろうかと恐る恐る相手を目で探る。
信じたいよ?信じたいけど、でもやっぱり身構えちゃうよね。
「あぁなるほど、それで挙動がおかしいわけ。俺に記憶があるのは多分こっちのゲーム世界に入る前に十四松が何かよくわからないモヤを吹っ飛ばしたからだと思う。隣にいたし……」
ああ、そういう事かぁ。
それなら納得出来るような出来ないような、でも十四松もそんな事言ってたし、呪いからは逃げれたって事ね。
良かったああああああ、あの儀式をしなくていいんだ!
「ちなみに他の奴らが記憶がなかった事も知ってる、もう戻ったみたいだけど」
「は?!な、ななななんで?!」
ちょっとちょっとどういう事?!
まるでそれじゃ━━━━━━━━━━
「ずっと見てたからね」
「え?」
今私はぽかんんと口を開けてとても間抜けな顔をしているだろう。
だって今まで一緒にいなかった一松が、ずっと見てた宣言。
そりゃぁ言われたらビックリするでしょ。
「見てた……って、いつから……?それなら普通に出て来てくれれば良かったのに。なんで今まで隠れてたの?」
そうだよ、私は皆を探してたし一松の事だって心配してたんだから!理由をちゃんっと聞かないと納得出来ないぞ。
「それは……秘密。」
一松は少しだけ口を開いたがすぐに視線を外し黙ってしまう。
秘密とか言われても逆に気になるでしょうが!