第31章 第三十話
「ふむ、これもあの玉の効力がなくなったからって事か」
「そうとしか考えられないよね、急に上手く戦えなくなるだなんて。それにナス子は普通に戦えてる訳だし早いところ猫を探さないとゲームクリアも難しくなるな」
いやー、これは困った。
何が困ったってこの先玉が見つからない限りは主な戦闘員って私だけでしょ?
弱いモンスターならともかく大型モンスターとか相手になったら私の攻撃なんて効かないようなもんだし、使っても例の攻撃くらいだから前途多難だよね。
━━━━━━━━━━コンコン
そう困っていると、ノック音が聞こえ部屋をカラ松が開ける。
マスターが来たのかな?
こうなってしまった以上討伐クエストも出来ないし地道なバイトをこなしてお金を返していくしないかなぁ。
なんてボーっとしながらゲーム世界の中でも働くんだなとか嫌な事を考えて部屋に入るマスターに目を向けるとマスターは1通の手紙をおそ松に手渡した。
「勇者様、この手紙なんですが実はこの宿にある内密便で魔法便というものがございまして、そちらに送られてきました。ホエホエ王国からです」
「ホエホエ王国~?どっかで聞いたなぁ……」
「ご内密という事なので、私は外しますね。では」
マスターが気を利かせて部屋を後にしてくれた後、私もその名前に聞き覚えがあって一瞬ポカンと考える。
ほんの一瞬だったけど、すぐにそれが何かわかると、おそ松も思い出したかのように私の方を向いて互いに指をさした。
「「ホエホエ王国! 密偵の!!」」
「密偵って、盗賊殲滅の時のあの人だよね?無事に国に帰れたって事か」
「そうだな、手紙を寄越したという事はそういう事だろう」
チョロ松も密偵の事はもう知っているし、特に説明する事もなくおそ松が風を切って中を読み始める。