第30章 【番外編】マツノトクエスト 第二十九話
「こん、な、事なら……宿で一回寝てから出発するんだった! 険しすぎてHP削られちゃう〜」
なんて事を言っている暇もなくおそ松から声が上がる。
「おい、お前らゆっくりしてんなよ!モンスターだぞっ」
「早く登って来て!!大型モンスターだ、ここは二人じゃキツイよ」
いや、お前らがどんどん先に行くからそうなるんだろう。
「さ、先に行ってて二人共。さすがにあの二人の所まで駆け上がる元気は老いぼれ姉ちゃんには残されていないわ」
私だって出来るものなら加勢してやりたいけど、元より男と女ってだけで体力が違うんだよなぁ。
「本当に大丈夫か?」
「ありがとうカラ松、大丈夫大丈夫」
「じゃあナス子姉、先に行ってるからね!」
二人が一気に斜面を駆け上がりみるみると姿が小さくなっていく。
はぁ、疲れた。やれ疲れた。
こんな山登りを楽しむようなキャラじゃないのだよ私は。
ヒィコラヒィコラしながらも少し遅く私が到着すると、ちょうどモンスターを倒したのか大型モンスターが溶けていく。
「よっしゃ、アイテムゲーット!!これいくらで売れんのかなぁ」
「かなり大きいモンスターだったし、言い値で売れるかもしれないね」
「中々手応えのある相手だったな、俺の力には及ばないが」
「ぼくのサポートあってこその勝利だって事忘れないでよぉ?」
ありゃりゃ、コイツらいつの間にこんなに逞しく成長したのかしら。
後ろから見ても立派な冒険者してるし、技も使いこなしてるんじゃ。
「お、やっと来たかナス子! 遅いよぉ、もうモンスター倒しちゃったよ俺たちで」
俺たちで、の所だけヤケに強調して聞こえるような気がする。
いつも私が説教ばっかりしているからかおそ松は踏ん反り返って偉そうだ。
見直したのに見直したって言うのも悔しいじゃないかコイツ。