第30章 【番外編】マツノトクエスト 第二十九話
それにしても秘境、癒しの泉!!
そのワードを聞いていかないなんて選択肢はありませんよね。
「秘境かぁ、行ってみたいなぁ。空の瓶もいっぱいアイテムで手に入ったしそこの水汲んでこうよ!」
「いいねぇ、秘境!!ここにスマホがあればイソスタにも載せれるのに、残念だなぁ」
「ゲーム世界にそんな文明の利器は必要ないのです!! さぁ、皆の者!今こそ旅立ちの時じゃっ」
「その台詞好きだなお前」
戻ってきて早々に持って帰ってきた使わないアイテムだけ部屋に置き私達は秘境の場所を聞いて早速出発したのだった。
・
・
・
「タクシー……タクシーを所望する」
「よく言うよナス子姉、さっき文明の利器はこの世界に必要ないとか言ってたよね?」
垂れてくる汗を拭いながら、私達は険しい山を登っている。
さすが秘境とでも言うのだろうか、急斜面で道は作られている訳でもなくただ藪の中を歩く。
「うぅ……馬車でもいい、何か乗り物」
「大丈夫かナス子? なんならおぶってやろうか」
私の後ろを歩くカラ松が追いついてきて顔を覗き込んで優しい言葉をかけてくれる。
カラ松って絶対に道で大きな荷物を持ったお婆ちゃんがいたら持ってあげるタイプなんだろうな。
「って誰が婆さんだっっ」
「え!? 言ってないっ」
「ハッ! ごめんごめん、ちょっと違う事考えてた」
ちなみにカラ松は後ろを歩いていたけど、トド松は隣。
おそ松、チョロ松はどんどん前を歩いて先に行っている。
同じ兄弟でも心配りの気配りの差がわかりやすいなぁ。
いくら私が相手って言ってもトド松は記憶戻る前も、戻ってからも何だかんだ私の側に居てくれてるような気もするし、カラ松は常に心配してくれてるし、同じ環境で育つ六つ子でも違うよねぇ。
これがRPGだからなのかはわからないけど、現実だとここまでは優しくはないのかなぁ。