第30章 【番外編】マツノトクエスト 第二十九話
おっとぉ、ヤバイヤバイ。
ここにいる三人が元魔王軍でしたなんて知られたらヤバイ事になっちゃうよ。
「そ、そうですか。なんでもないのならいいのですが。勇者様、そして皆様、改めて明日はお礼をさせて下さい、本日は準備もありますので……どうぞ旅のお疲れを今日はゆっくりお過ごしください」
「え、マジで?!ひゃほーい、言ってみるモンだなぁ、オイ!! ナス子もいいよなぁ、だって店主のおっちゃんから言ってくれた事だし、そんなお願い事を無碍にするなんて勇者としてどうなのよぉ?」
「痛っ、ちょ、わかった! わかったから背中叩かないでよ……ゲホっ」
調子のいいおそ松がその場にジャンプして、思い切り私の背中を叩くものだから咽せてしまう、コイツ!少しは手加減くらい覚えろっての。
まぁね、他の松達も待ってましたとばかりの顔をしてガッツポーズしてるし、あんな事言ってたチョロ松までも手を頭に回し参ったなぁという雰囲気。
これはもう折角の申し出という事にして私も甘えちゃおうかなぁ。
なんたって死にかけた訳だから、少しくらいいい思いしたっていいよね、少しくらいは、さ。
「あ、アナタ。お疲れの勇者様ご一行にあの場所を教えて差し上げたら如何かしら」
「ん? ああ!そうだな、ここ最近多忙で忘れていたがお疲れを癒すには最適な場所だ」
店主トト●と一緒にいた若奥さん、急に目を輝かせて両手を合わせる。
なるほど、そういえばここに美人さんがいたからカラ松達はちょっと格好つけてた訳か。
おそ松だけ強欲なのにも納得いったかも。
「あの場所って何ですか?」
私も聞こうとしたけど、チョロ松が先に質問して、皆もキョトンとした顔をしている。
でも癒すには最適という事はRPG的に言えば泉かな?
「はい!癒しの泉です、そこの水は飲めるだけでなく浸かるのも滋養供給にいいと言われている秘境なんですよ。知る人ぞ知る場所なので皆様も立ち寄りやすいかと」
一々ジェスチャーをつけて説明してくれる様が可愛い奥さんに、皆が鼻の下を伸ばしたままだ。
もう旦那さんもいるってのにこれだから童貞は……。