第26章 【番外編】マツノトクエスト 第二十五話
「あ、おい。勝手に触んなよな! コイツは聖なる乙女なんだから!」
近くにいたおそ松が私と密偵の人の間に入り、その手を乱暴に解き放つ。
ほんと構って欲しい長男なんだから……。
「あぁ! も、申し訳ありません、私とした事がなんたる失礼な事をっ」
「え、いや……別に手を握るくらいで能力を失うとかないし大丈夫だけど」
「ダメ。お前は俺ら以外に触られるの禁止!!」
「はぁ? どういう事なのそれっ、まぁ好きに触って下さいとも言わないけど勝手に決めないでよね」
剥れたおそ松は私の体を後ろから、肩辺りの位置で両腕をホールドして頭の上に顎を乗せて来る、重い。
動きにくいし邪魔だし、記憶戻った途端に本当小学六年生丸出しの独占欲。
その姿を不思議に思った密偵は何かを察知したのか私達二人に気まずそうな視線を向けあらぬ誤解を喋り出す。
「も、もしや勇者様と貴方様は既にお付き合いか何かしてらっしゃるのでしょうか、最初の挨拶時も一緒にいましたし……」
「「は?」」
これには私もおそ松も目が点だ。
一日限定彼氏(本編参照)として付き合ってもらった事はある。あるが、決してそのような関係ではない。
おそ松も言われて私からすぐに手を離して鼻を擦っているが顔を真っ赤にして無言。
何か言え、否定をしろと細い目で見上げる私。
「まぁ、知らない仲ではないっていうか……付き合いは深いって言うか……」
「なるほど」
「いや、なるほどじゃなくて違いますから! コイツはただの幼馴染です! そんでもって今はパーティ仲間です!」
「え~、そこ言っちゃう? 面白いからそのままでいいのにぃ!」
「面白半分で嘘つくな馬鹿っ」
ポカっとそのニヤつき顔の頭を殴ると後ろでクスリと笑われた気がしたがこんな和んだ会話をしている暇ではない。
外から煩いくらいの人数の足音が聞こえる。
一応部屋の鍵は施錠してあるし、私達は盗賊の恰好をしてるから大丈夫だとは思うけど足音の人数を想像すると冷や汗が垂れて押し黙ってしまう。