第24章 【番外編】マツノトクエスト 第二十三章
「…っ」
一番近くにいたカラ松が一歩踏み出そうとしてくれているのが見えたがその瞬間……
「お前新入りかぁ? 小せぇなぁ、ったく取れないなら取って欲しいって言えよな。ほらよ」
「え? は……え?」
ポンっと手の中にパンを渡され頭をポンポン叩かれる。
そりゃこの盗賊に比べれば見上げるくらいには身長違うけども、どんなフラグですかこれ?
本屋さんで本に手が届かなくなって「これが読みたかったの?」とか言われて取ってくれるイベントみたいなオチ。
「あ、ありがとうございます」
いやぁ、後ろでカラ松ズッコケてるしおそ松もトド松もめっちゃ安心した顔してるよ。
私もハリセンから手を離し、ホっと一息。
「んじゃ、俺はそろそろ今晩の宴の準備しなきゃなんねぇし行くわ。お前らも担当あんだろ。ここにいるって事は調理担当か?」
「えっと、はい!」
「そうかそうか、精々美味いもん作ってくれよ? まぁ宴つっても魔王の配下が来るくらいなモンだしそこまで大層な事ぁしないらしいけどな」
宴?魔王の配下?
私達はタイミングがいい事に、いや、悪い事にそんなイベントがある時に乗り込んでしまったという事か?!
思わず視線をカラ松に向ける。
カラ松も真面目な顔になり私の目を見た。
「あの、わたっ……俺! 新入りであまり知らされてないんですけど、その……お客様は一体何のご用件で」
「? 随分丁寧な口調してんだなお前。新入りなんてそんなもんか! まだ若いなぁ、がーっはっはっは!! さぁな、魔王様が俺らみたいなハンパもんに何の用事なのかはしらねぇが、善も悪も関係ねぇよなぁ!! 俺達は俺達のやりたい事をする、ただそれだけだっての~」
わぁ、この人おそ松にちょっと似てるぅ。
バシバシと肩を叩かれて一緒に笑う、しかし笑顔はひくついたまま。
「そうっスね!! 兄貴の言う通りッス、それじゃ俺達準備あるんで~」
いつの間に隣に来たのか、おそ松が私の手を引き自分の身体側に寄せながらニコニコと盗賊に手を振る。
「あー、そうだな! 一応客人には客人、魔王の配下が相手となっちゃぁ、機嫌そこねて戦闘になっても面倒だもんなぁ、早く俺も仕度してくるわ」
「頑張ってくださ~い」
盗賊が去っていき、全員で大きなため息。