第20章 【番外編】マツノトクエスト 第十九章
「しない! ええぃ、放せ! 村の人達に誤解を植え付けたらどうすんだっ」
握られた手を思い切り強く振って、おそ松の手を剥がそうとする。
しかし手はがっちり握られていて放してもらえない。
「あ~、わかった! もしかしておそ松が寂しくなっちゃったんでしょ? お姉ちゃん思い出して甘えたくなっちゃったのかなぁ? ん? ん~?」
「ばっ……寂しくねぇし! なに言ってんだよ」
わざとからかってやると、顔を僅かに赤くしたおそ松はやっと私の手を離してくれた。
繋ぐのが嫌って訳じゃなくて、本当に宿の人に誤解を与えたくないだけだからね。
弟に甘えられるってのも嬉しい事だしさ。
でも本当におそ松っておそ松だよね。
さっきまでのおそ松もおそ松らしさはあったけど、記憶戻った途端スキンシップが一気にグワーっと増えるくらいだし。
記憶が戻る前は、いくら私が女でもタイプじゃないからってセクハラ的な事もほぼなかったし……そう考えると私達、幼馴染じゃなかったらここまで仲良くなかったのかもなぁ。
ってそんな事考えてたって別に何がどうなる訳じゃないけど、改めて見た事のない松野おそ松をみた気分だった気はする。
村の入り口が見えてくると、その門の前に二人の影が見える。
それがコチラに気づくと凄い早さで近づいてきて私はその二人に抱きつかれた。
「ナス子!! 無事で良かった、中々二人が帰って来ないからマスターに話を聞いて俺達も探しに行こうとしていた所だったんだ」
「ナス子姉! 外に行くなら一言くらい言ってってよね! もう、心配したんだから!! おそ松兄……おそ松が一緒だとは思ったけど喧嘩した後だし、もしも二人に何かあったらって考えたら気が気じゃなかったんだけどぉ」
ギュウギュウと締め付けられていて苦しいのだが、それが温かく感じる。
二人を抱き返して謝罪の言葉を述べようとした時、おそ松が割って入るように口を開いた。
「おそ松だぁ? お前いつからお兄ちゃんの事呼び捨てにするようになったんだよ、トッティ~」
「え、えぇ?! おそ松……兄さん?」
「おそ松、お前……呪いが解けたのか?!」