第20章 【番外編】マツノトクエスト 第十九章
だが余韻に浸っている暇もなく、目の前にはどんどん血の気がなくなっていくナス子が横たわったまま。
記憶が戻ったら逆にゲームの中だから、とか、蘇生できるからとかって感情はなくなってしまって、必死になって人工呼吸を続けた。
「━━━━━ハッ!! うげっほ……ごっほっ……ウオェェェェーっ……はぁ、はぁっ……鼻の中気持ち悪いっ、ぷ、プール……で、おぼ、溺れた時、みたい…な、ペッペッ……」
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「と、そういう事!」
「なるほどねぇ、なんか色々その……ありがとうね? あと心配かけちゃって本当の本当にごめ」
「もう聞いたってぇ、何回言うんだよそれぇ~」
全て事細かに説明を受けた訳ではないが、おそ松の経緯の説明を聞いて何が起こったのかを理解出来た。
それに、記憶が戻る前のおそ松もなんだかんだ言いつつも優しいおそ松のままだったのだ。
多分私の名前を呼ばなかったのは私をまだ伝説の乙女やパーティの仲間、戦力的に考えても完全には信じ切っていなかったからなのかもしれない。
けど、さっき聞いてみたら普通にこう答えられた。
「え、俺名前呼んでなかった? あー……全然そんな事意識してなかったからわっかんねぇ~、言ってくれればいいのにぃ」
「え、全く気にしてなかったって事?!」
「うん、それにお前を連れて来たのは俺だしな、まぁ役に立つ云々はちょこぉっとだけ考えてたかもな、ひひひ~」
と、いう事らしい。
なんだ、それならさっさと名前で呼んで欲しいって言えば良かった。
『おい』とか『お前』とかが私の名前みたいになってたもんね。
「ねぇ、ところでおそ松」
「あー?」
「………何故手を繋いでいる」
「え~? 何でって、やっと記憶も戻った事だし、ナス子も寂しい思いしてたっていうし? こうしてた方が安心しなぁい?」