第20章 【番外編】マツノトクエスト 第十九章
「ごぼっ……んんっ!」
思いっきり剣を魔物の胸につきたてると、耳を劈くような悲鳴を上げて、絶命した。
魔物の髪の毛に絡め取られるようにされていたナス子が解き放たれ、その身体を抱えて急いで陸に上がる。
「━━━━━━━━━っぶはっ!! っはー……はーっ……げほっ」
俺肺活量あるほうじゃないんだってぇ……。
「おもっ! んぐぐぐっ……だぁりゃっ!」
気を失っている+びしょぬれの人間ってクソ重たいんですけど?!
なんとかナス子を陸に引き上げ、仰向けに寝かせてその顔をペチペチと叩いてみる。
「おいっ! おいって! 聞こえますかー?! 聞こえなかったら聞こえないって言えよー?!」
わりと強めに叩いてみても、反応はない。
ぐったりとした青い顔に、耳を近づけてみる。
「………やべぇ、息してねぇじゃんっ!」
慌てて心臓にも耳をあててみるが、こちらはなんとか動いてる。
だがこのままにしておけばこちらもじきに止まってしまうだろう。
「おいっ! おい………っナス子! 助けに来てあげたよぉ俺がっ! おいって! 謝らせろよっ! ナス子!」
俺はなにをこんなに焦ってんだろ?
別に、蘇生すればいいんだからさ、死んだって。
死ん………
ナス子が?
なんでか、どうしてかはわかんねぇけど、そう思った瞬間俺のほうが心臓が止まりそうになった。
ダメだ。
「ナス子っ……! おい! 起きろっ! 死ぬんじゃ……ねぇよっ……」
したことはないけど一応心得だけはあった心肺蘇生法を人生で始めて試してみる。
実は、この時のことってあんまり覚えてないんだよね。
「━━━━━━━━━━……!?」
ナス子に……キスじゃないよ?! あくまで人工呼吸だけどねっ?!
口と口がくっついた瞬間、俺の股間がまた光り出した。
そして。
「………ナス子……そうだ、カラ松、トド松っ……俺、なんで忘れて……っ」
俺は全てを思い出した。