第20章 【番外編】マツノトクエスト 第十九章
「おそ松、信じられないのは仕方ないと思う。今トド松が言ったように、俺もそうだった。だが、おそ松……お前は違うだろう」
「は? 何が違うって?」
てっきり怒ってると思ったんだけど、意外に冷静だなコイツ。
空気はピリピリしているような気がするけど、特にこっちにくってかかってくるような様子もないし。
「おそ松が信じていないのは、話の内容じゃない……俺達のことを信じていないんだ」
「…………」
「え………そうなの、おそ松兄さん」
カラ松の背から、トド松が顔を出して俺を見てくる。
言われた言葉に、つい黙っちまった。
それは、図星だったからだ。
「なにそれっ! そんなのぼくでも怒るんだけどっ」
「いや、それも仕方ないだろう。俺達はもう記憶を取り戻しているからいいが、おそ松にとって俺達はあくまで旅の途中で知り合って、玉が光ったから仲間になったってだけの関係だ」
これも図星。
あれぇ? コイツこういうキャラだったっけ? もっとバカじゃなかった?
こんなまともなこと言える奴だったんだな。
「だが、おそ松、お前がさっきナス子に言った言葉は、パーティーメンバーとか、信頼してるとかしてないとかは関係ない。女性に対して失礼な言葉だとは思わないか?」
……まぁ、そう言われると、そうかもしれない。
だけどいつもの軽口だぜ? 本気に受け取ってあそこまで怒ると思わないだろ普通。
俺が黙っていると、それを肯定ととったのか、カラ松が浅く溜め息をつく。
「少しでもいい、そう思ったなら、謝ってくるべきだ。ナス子は謝れば許してくれる」
「……なんで俺から」
「おそ松」
低い強めの口調で名前を呼ばれ、どうしてか反論できなくなる。
このパーティーのリーダーは俺なんだけどっ。
顔を上げると、カラ松、トド松、二人から強い視線を感じて、これはもう言うとおりにしたほうがいいなと思って仕方なく腰を上げる。