第20章 【番外編】マツノトクエスト 第十九章
「てかさぁ、お前、水難の相でもあるんじゃね?! 最初会った時も、チョロ松ん時も、今も! どんだけビショビショになんだよぉ」
「……っう、うるさいなぁ……好きで濡れてる訳じゃないんだけど」
「なぁなぁ、俺の記憶戻って嬉しい?」
真面目な口調で話してたハズだったが、日頃馬鹿な会話を繰り広げている私達。
すぐにいつもの口調に戻ってしまって、おそ松は私の顔を見てニヤニヤしている。
「…………………うん、嬉しい」
「は?! どうしたナス子、お前そんな素直なキャラじゃなくね?! もしかしてお前もどっか記憶かなんか抜け落ちてんじゃないの? いや、生意気な態度が抜け落ちてるのか!」
「アンタねぇ……ほんっと、記憶戻った途端厚かましいっていうか」
一言二言多いなコイツは。
素直に嬉しいから嬉しいと言っただけなのに。
二人共服は濡れたままだし、冷えた服のままくっついていると言うのは寒い。
と、思うのだけど、何故か温かく感じてしまうのは今のこの安堵の気持ちからだろう。
「でも、まぁ。助けてくれたのは勇者っぽい感じだった、かな」
今日はやけに素直にツラツラ言葉が出てきてしまうなと思うも、ポツリと発した私の言葉はハッキリとおそ松の耳に入っていたようで、口端を上げて私を見下ろしてくる。
「勇者っていうか、俺彼氏だしぃ? 彼氏が彼女助けにくるのって当たり前だよねぇ~」
「何言ってんの? 彼氏は一日限定で!! って言ったでしょっ」
身をおそ松から強引に剥がし、おそ松の頬を軽くつねってやる。
ここまでの旅の中の恨みも込めて……だ。
「いででででで」
「ぬはははは、痛いであろう痛いであろう!」
こんなやりとり久しぶりだ。
早く宿に帰って、カラ松とトド松に報告して安心させてあげなくちゃ。
そう思った時、おそ松の瞳に映った何かががキラっとして私は首を捻る。
ヒョイっとおそ松の手が私の肩に触れると、装備の間から綺麗な鱗が一枚ついていたらしくそれを持ち二人でキョトンとした後にドっと興奮が湧き上がった。