第2章 【番外編】マツノトクエスト 第一章
何をコイツは言っているのだろう。
ダサいのはわかる、初期装備だし。いつも言われてるし。
しかも私がおそ松なんかをナンパする訳ないじゃないか。
私だってタイプじゃないんだし!!
「ゆう、しゃ……様?」
「そう、勇者様ぁ!! 俺の事知らないの?! あ、そうだっ、それよりいきなり村の湖に落ちてきたアンタを拾って助けてやったんだからお礼の一言くらいあってもいいと思うんだけどっ?」
湖に落ちた?
でも服は乾いてるし濡れてる気配はない。
「えーっと、ありがとう? ねぇ、ホントにアンタおそ松なの? 顔は一緒だけど私の知ってるおそ松?」
「意味わかんないんだけど。 俺は正真正銘、勇者おそ松だっての! 知らないなら今覚えとけよー、世界を救うのはこの俺なんだからさぁ、だーっはっはっは」
ああ、この馬鹿な笑い方はおそ松だ。
って事はこの世界に来ておそ松は私の事を忘れてしまった?
ゲームの世界では記憶までもがなくなるって事なのかな、それとも不具合か何かなのか。
誰かに説明を求めたくても求める事も出来ない。
「ねぇ、私どのくらい寝てたの? えーっと、ゆゆゆゆゆ勇者様?」
「半日くらいかな、つかどもりすぎじゃね?! 別にいいよぉ、おそ松で」
勇者勇者煩いからそう呼んで欲しいのかと思ったら普通に名前で呼んでいいらしい。
「じゃあ、おそ松。 私ちょっと記憶飛んでてわかんないんだけど、湖に落ちたってどういう事かな」
「あー、俺が釣りしてたら急に空からアンタが降って来たんだよ、んで俺が助けてやったって事! 濡れた服もちゃーんと着替えさせてやったんだから感謝しろよなぁ?」
得意気に言われているが、それは私の服を脱がしたと言う事で当たっているのだろうか、いや、当たってるよね?
って事はもうこれ殴ってもいいよね?