第16章 【番外編】マツノトクエスト 第十五章
「嘘なんてついてどうするの空っぽ兄さん! そんな嘘ついたってぼくには何の得にもならないでしょ? それともなんかメリットあんの? マジでめんどくせぇ」
「え」
トッティ、さっきから面倒臭いしか言ってねぇぞ。
うーん、まさか優しくて単純馬鹿でチョロイカラ松が信じてくれないとは思わなかったな。
まぁ、大方は受け付けの女の子に夢中になったのが原因と、私がカラ松の事を恋愛的に好きだって勘違いしてるからだろうけども。
「ちょっとちょっと、ナス子姉……」
「ん?」
トド松に腕を引かれ、カラ松の目の前だというのに構わず内緒話をしてくるトド松。
さすがだトド松。
まぁ目の前で内緒話されて気にも留めていない感じのカラ松もそれはそれですごいけど。
「もうさ、どうせ信じてもらえないなら話す時間が勿体無いからさぁ、さっさとすることしちゃってよ」
「えー、いいの、それで……なんか痴女みたいじゃん」
「いいでしょ、だって何が一番大事か考えてみなよ。兄さんたちの記憶を取り戻すことが何より先決でしょ? 違う? 違うなら反論してみてよ」
「そ、そうだけど」
トド松の言う通りだ、今最優先しなければいけない事。
それはカラ松、そして他のパーティ達の記憶を思い出させる事。
そうすれば一松だって十四松だって今よりも効率的に探しに行く事も出来るかもしれない。
「カラ松、お願いがあるんだけどさ」
グッと一度口を噤んだ私だったが、トド松の押しもありやっと本来の目的を告げる。
「キスさせてくんない?」
「why?! な、ななな、何を突然言い出すんだナス子! 急すぎるぞっ、いいいいくら俺に惚れているからと言っても俺はお前の気持ちに応える事は……」
若干引き気味のカラ松。
いやぁ、ここまで後ろに下がって汗ダラダラ流されるとお姉ちゃんちょっと切ないんだけど。
「あーあ、もう何も言わずにさっさとしちゃえばよかったのにぃ」
「アンタ他人事だと思ってすき勝手言うなさっきから!」
だってさ、いきなりチュってして抵抗されたら私だって一応女だよ?
さすがに傷つくわ!!