第16章 【番外編】マツノトクエスト 第十五章
「あー……じゃあ、俺にかけられている呪いというのは、どんなものなんだ?」
おそ松とチョロ松がいないせいか、今日はちゃんと聞く体勢をとってくれる。
カラ松という男は、優しいことには代わりはないのだが、とにかく周りに流されやすいというか、わりかしそういうところがある。
状況的には二対一なので、話を聞くことにしてくれたのか。
「あのね、とある記憶が抜け落ちちゃってるんだよ。スッカリ忘れちゃってるの」
「記憶……? うーん、そう言われてもな……特に忘れていることなんてないと思うんだが」
「そりゃそうだよ、忘れちゃってるんだもん。忘れていることさえ忘れちゃってんの。わかる?」
「そ、そうなのか……?」
話はちゃんと聞いてくれているものの、やっぱり突然こんなことを言われて納得はしていないみたい。
ピンとこないんだろうなぁ。
「ねぇカラ松、変なこと聞いてもいい?」
「なんだ?」
なんとなくなんだけど、記憶が戻る前に聞いておきたかった。
「私のことどう思ってる?」
「え……なんだ、急に……ふっ、どうやらナス子……お前もこのカラ松の魅力にとりつかれてしまったようだなぁ……!」
「そういうのいいから、ね、どう思ってる?」
「俺はなんて罪な男なんだ……まぁ一緒に冒険をしている仲だ、数々の戦いの中で俺の魅力に惹かれてしまうのは仕方のないことなのかもしれない……」
すっかりクソ松ゾーンに入ってしまったカラ松に冷めた目線を向けていると、横のトド松がゾーン切りとばかりにカラ松を蹴り倒す。
「アウチ!! 何をするんだトド松っ!」
「いいからさっさと聞かれたことに答えろよ面倒臭いなっ、ていうか、ナス子姉も何その質問っ、ぼくには聞かなかったよね」
「え? いやぁ、なんとなく聞いてみたくなっただけだから別にいいんだけどね」
なんでこんなこと聞いちゃったんだろう?
もしここで嫌いとか言われたらさすがにそういう相手にキスされるのは嫌だろうなぁって思ったのはそうなんだけど。
いや、たとえ記憶がない状態でも嫌いとか言われたら堪えるんだけど……!