第16章 【番外編】マツノトクエスト 第十五章
いや私もキスって考えるからいけないのか。
よし、考えないようにしよう。
あれはただ、唇と唇をくっつけるだけの行為です。
いわば呪いを解く儀式です。
「はー、食った食ったー、んまかったー」
「ごちそうさまでした。確かに美味しかったね、焼きたてのパンなんてなかなか食べられないし」
「んん、デリシャスだ」
おそ松とチョロ松はそうそうに食べ終わると、ただいまスッカリぞっこんになっている受付のお姉さんの下へと行ってしまった。
テーブルには私とトド松、カラ松だけが残る。
あれ? これもしかしてチャンスなんじゃない?
今話さなくていつ話すの? 今でしょ。
「ねぇカラ松、食べてるところ悪いんだけどさ」
「ん? どうしたんだ?」
と話しかけたはいいものの、どう切り出そうか私が迷っていると、隣のトド松が助け舟を出してくれる。
「あのね、ぼくたち……カラ松兄……カラ松に、相談したいことがあるんだ……おそ松でもチョロ松でもなく、カラ松だけに……聞いてもらえないかな?」
末っ子モード全開のトッティ登場。
思わずすんとした表情になってしまったが、いけない、私は助けてもらったんだからコレに乗らないとならない。
「そ、そうそうっ……こ、このパーティーのカリスマ的なカラ松にどうしても聞いてもらいたいのぉ~いいでしょおん?」
バチコーンとウインクをしながら、トド松の真似をして精一杯甘えた感じの態度を取ってみるが、ふとチラリと横を見るとトド松の冷めた目がこちらに。
人ってこんなに冷たい目が出来るんだぁ、うわあって思うくらいには心にきた。
しょうがないでしょうが! 私は人心掌握術の達人でもなければ大人数兄弟の末っ子でもないんだからっ!