第7章 ショコラ scene5
「えーっと…その…名前は…?」
「え?わたしの?」
確か先生は名前を聞くことから始めてた。
「そう…俺は翔っていうの。お名前は?」
「ちか…」
「ちかちゃんか…」
不思議そうな顔で、俺のことを見上げてる。
「かあさま…ここは外国?」
「外国?」
「だって…このお水だって、飲んだことないし。お洋服だって…」
「ああ…ああ…」
そう言えば、純一郎さんも目が覚めた時、まだ生きてたときのことを喋ってた。
この子も、生きてた時と環境が違うから、戸惑ってるんだ…
「かあさま…?かあさまは、かあさまじゃないの…?」
「えっ…うう~…」
多分…この子を自分の腹で育てたんだろうから、俺が”かあさま”なんだろう。
「どう…説明したらいいだろうなあ…」
もうあなたは死んでるんですよって…
そんなこと、俺から言えない。
「かあさま…」
考え込んでたから、呼ばれて顔をあげたら泣き顔でびっくりした。
「わぁぁぁっ…な、泣かないのっ…」
「う…ぅ…」
雅紀の泣き顔は何度だって見てるけど、何度見ても心臓に悪い。
「ま、雅紀ぃ…」
「ちかのお名前、まさきじゃないぃ…」
「あ、ああ…ごめんごめん…」