第3章 アリストテレス
服が風呂掃除でビショビショになっていたから、とりあえず着替えてから家を出たほうがいいな…
そう思って踵を返したら、潤が俺の肩を掴んだ。
「翔くんの車バレるじゃんっ…だめだよっ!」
「んなこと言ったって…朝までアイツラいるぞ?」
「でもっ…」
「いいからそこで待ってろよ」
そう言って歩き出した瞬間、すんごい強い力で肩を引かれた。
「翔くんっ…」
「どあっ…」
玄関マットがなぜかつるりと滑って…
天井が見えた瞬間、目を閉じた。
来るべき衝撃に備えて奥歯を噛み締めていたんだが、なんだか柔らかいものに俺は包まれていた。
「…あ…?」
「あっぶな…」
潤が俺のこと、抱きとめてた。
「ごめん…」
「…ああ…」
素足が玄関の叩きに乗ってて、気持ち悪い。
服もびしょびしょだし、潤が濡れてしまう。
「ちょ…離せよ」
「翔くん…」
「いいから、服濡れてるから…」
そう言った瞬間、ぎゅっと腕に力が入った。
「…潤…?」
「翔くん…俺…」
「なんだよ?」
「…きだ…」
「ん?」
声が小さすぎて、よく聞き取れなかった。
「だから…ここに居てもいい…?」
「え?」
「朝まで…ここに居ても…いい…?」