第9章 雪辱
「ッ!」
オラオラオラオラオラッ!
迫り来る透明の刃を一つ一つ正確に拳で叩き落とす。
ズババババババババババッ!!
雨のようにお構いなしに降り注いできて、キリがない。
思った以上のスピードで、弾けば弾くほど、どんどん押されていく。
(チッ…!何て数とスピードだ。下手に動けば、狙いがズレて、最悪"コイツ"に当たる)
承太郎は考える。
一旦距離を置いて、差し迫る氷の刃の狙いから外れるように動くには、隙が無さすぎる。
今一瞬でも、ラッシュの拳を止めれば、絶対に避けられない。
(だったら……)
バッ!
承太郎は無数の氷の刃から逃れるために、一瞬、拳を止めた。
瞬間、背中を向けるようにして盾となり、前方で抱えている由来を守るようにして、動きを変えた。
「!」
ズバァッ!
刃の一つが、承太郎の右肩を貫き、真っ赤な血で染まっていった。
ズシャアッ!
「ッ!」
転倒するような形で氷の刃を避けるも、自分が下になるようにして身体を張って由来を守る。
「ッ……無事か?」
「じょ…たろ…」
由来は相変わらず深刻な状態で、まともに喋ることすらできないくらいの重症だ。
そりゃあそうだ。さっきまで生命活動が止まっていて、仮死状態から解放されて、まだ10分ほどしか経っていないのだから。
幸いにも流血が止まるほどの寒さで、これ以上血を失うことは無さそうだが。
「いや、無事なわけねえのに、聞く方がおかしいか」
「……私…は」
由来は俯いて黙り込む。
そうやって辛気臭く暗くなるのは、承太郎は好きじゃあなかった。
「……これであいこだ」
「?」
由来は顔を上げる。
「お前が初めて俺を助けた時の借りだ」
初めての……あ。
承太郎が石段で落ちた時、ホワイトシャドウで助けた時のことか。
「受けた恩は必ず返してやる」
「!」
承太郎は立ち上がり、由来を抱え直して、再び敵と対峙する。