第2章 手と手を繋いで
…ーーー!
今、名前を呼ばれた気が……
背筋がゾクリと冷えて、鼓動が速くなる。
気のせいか……?
気のせいであって欲しい。
「佐助くん…いるの………?」
気のせいじゃなかった。
莉菜さんが…
起きてしまった……
(終わりだ)
覗きによる軽犯罪法違反。
及び住居不法侵入。
(嫌われる)
目の前が、真っ暗?真っ白?になった。
…けど おかしいな。
なぜ俺に気づいたんだろう。
気配は完璧に消してる。
灯りも無い暗闇の中、部屋の隅にいる俺の姿は莉菜さんには見えない筈だ。
このままスルーしていれば、勘違いだと諦めてもう一度眠るかもしれない…
………ーーーーー
数十秒間。
自分史上最高水準の気配断ちを試みる。
これはもう、謙信様の目をも欺けるほどの水準だ。
「いるんでしょ……?」
「っ」
…駄目だった。
もう誤魔化せない。
「うん… 居る…… 莉菜さん、こんばんは」
色々と覚悟を決め、俺はついに返事をした。