第3章 どっちもどっち、どっちもすき
「ん...んふっ...」
潤の名前を呼びたいのに、潤がそれを許してくれない。
潤はおれをがっしり包んだまま、舌を絡ませながら部屋の奥に進んでいく。
いくら片付けたとはいえ、家具の角なんかに足やら背中やらぶつけちゃう。
やっとの思いでなだれ込んだのは、おれのベッドだった。
唇がそこでようやく離れた。
50メートルを全力で走ったくらい息が上がっていた。
「ごめん...ごめん...智...」
潤の大きな目がキラキラして、まつ毛に涙が乗る。
おれの胸に、潤の涙が直接落ちた。
潤がおれの来ていたスウェットを引き上げたから。
「えっ!?ね、潤?聞いて、話すから」
「やだ。別れる前に、おね、がい」
潤の目から涙がボロボロ零れて、肩が震えてきた。
完全に、言うタイミング失った。
跨がれて、手首がベッドに沈む。
潤の顔が視界から消える。
その後、胸に違和感。
その違和感は一瞬だけで、気持ち良いゾクゾクが背中で生まれる。
「んへっ!?じゅん...!」
女とはそこそこ経験豊富なのに、なんだかぎこちないのは気のせいなのかな。
そんなのも気にならないくらい、むしろ気にすることができないくらいゾクゾクする。
おれできたのは、寝室の隅っこにまとめて置いてあった、大人の道具たちを見つめることだけだった。