第2章 僕が手品をがんばる理由
雰囲気を作るために置いてみたキャンドルの炎が揺れる。
「じゃあ、代わりにもう一個手品やってあげる」
「ほんとぉ!?」
勢い良く起き上がった貴方。
そんな風に期待されると、少し緊張してしまう。
貴方はそんなこと気づかないんだろうけどね。
「んへへ。やった」
無邪気にはなったその言葉で俺の身体は熱くなるんだ。
貴方はそんなこと考えたこともないんだろうけどね。
さっき起き上がって乱れてしまった前髪を直す貴方。
その手、仕草そのもの、覗く瞳。
全てに触れたくて、全て抱きしめたくてしょうがない。
貴方は、俺がそう思ってるなんて、知る由もないんだろうけどね。