海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第3章 新しい旅
マリィside
「あ、悪ぃ」
「あ?てめぇ誰だよ?俺が誰だか知ってんのか?」
たった今、船長の男は緑の髪で、目のところに傷がある男とぶつかり、喧嘩を売っていた。私にはこれ以上ないほどの好都合。
「お前が誰とか知るわけねぇだろ」
「俺ァな…って、話を聞けよな!」
私はその隙に逃げることにした。私は少しずつ距離をとり、森の方へ駆け出した。男が私に気づいて追ってくる様子はない。これは、逃げ切れるかもしれない。安堵してため息をこぼした時。
「逃げたらどうなるか、言わなかったかな?」
聞き覚えのある声に、足が止まる。振り返ると、予想した通りの人物が立っていた。
「や、えっと…」
「死ぬか、海軍へ行くか。選べ。」
そんな…どうして追いつかれたの?気づいてもいなかったはずなのに。
「あいつが教えてくれて助かったな」
あいつか!!脳裏に緑色の髪の気だるそうな男の顔が浮かぶ。
「で、どっちだ?」
「どっちもいやって言ってるでしょ!」
「じゃあ、俺の自由、だな?」
「え?」
男の手が伸びてくる。私の腕を掴むと、もう片方の手を懐に入れるとナイフを取り出す。どうやら殺す方にしたらしい。
「や、やめて!」
「初めてじゃないか?そんなに叫ぶのは。そういうのもいいな。まぁ、死ぬんだからどうでもいいか。」
男が腕を振り上げる。これから来る痛みを覚悟して、目を瞑る。
お願い、助けて。勝手にいなくなっておいて、こんなこと頼むなんて図々しいってわかってるけど、それでも頼ってもいい?ロー…
「ロー!!」
「誰だ、そいつぁ…っ…」
突如声が途絶え、目を開く。一瞬、私は幻かと思った。そこには、奇跡みたいな光景が広がっていた。
「間に合ったか…」
そこには私の大好きな人、たった今誰よりも会いたいと思っていた人…ローが、息を切らして立っていた。片手には刀が握られている。側には先程まで私の腕を掴んでいた男が倒れていた。
「ロー…」
「自分の身も守れねぇようじゃ家族なんて助けら…」
ローが言葉を言い終わる前に、彼に抱きつく。助けに来てくれた。それが信じられなかった。勝手にいなくなった私を。嬉しいやら申し訳ないやらで、うまく思考がまとまらない。色々言いたいことはあるけど、とにかく今1番伝えたいことを最初に伝えることにした。
「ありがとう、ロー」
本当に本当にありがとう。心から感謝してる。
