海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第2章 次の島まで
私はこういう手のことよく知らないし、経験もないけどそれくらい想像つく。恋愛小説で読んだことあるし。
そこまで強い力で抱きしめられてる訳じゃない。
まるで、壊さないようにそっと優しく腕を回されてるだけ。だからきっと抜け出そうと思えば抜け出せる。でも離れたくない。
時間が止まったかのように、私とローはその体制のまま無言を貫く。
すごく、離れ難い。今、私を抱きしめている腕からも、別れが近づくローからも。
なんとなく理由は分かってる。
でも、今までずっと見て見ぬふりをして認めないで、別の理由があると、その理由を探し求めていた。
でも、いくら探したって見つからない。
だってもう答えは出ていて、それ以外の答えなんてないから。
もう、現実から、自分の気持ちから逃げることはできない。
こんなに今までにないくらいドキドキしていて、でも幸せな気持ちはいつか本で読んだ。
きっと私は今、恋をしてる。
苦しくて、辛いけど、すごく幸せで、ドキドキする。私はやっと初恋をしてる。
今までに感じたことがないような気持ち。ローに対してのみ感じるこの感情。
むしろ、これが恋ではないなら、なんなのか教えてほしいくらい。
でも、恋だと分かったからといって想いを伝えることはできないし、ローと離れることをやめるわけでもない。…でも。
決心が揺らいでしまいそうで怖い。
もう少しここにいてもいいかな、なんていう図々しい考えが浮かんでくるのも嫌だ。
ローといると、決めた想いが、心が揺れてすごく苦しくなる。
もうすぐに一緒にいられなくなる。
そう考えただけで。
私はローの背中に腕をまわし、抱きしめ返す。
でも今は。
今だけはこうしていたい。自分がしたいようにしたい。
想いはきっと伝わることはないけど。繋がることはないけど。
想っていてもいいでしょ?
離れてしまっても、もう一生直接話すことも顔を見ることもなくても。私の初恋がローってことは変わらないし、きっと私はこれからロー以外の人のことを好きになることはない。よく分からないけどそんな気がする。
かっこよくて、強くて、クールだけど、本当は優しい。『死の外科医』なんて言われてるみたいだけど、全然そんなんじゃなくて人間らしいとこもある。
こんなロー以上の人なんて多分見つからない。
ずっと一緒にいたいけど。
私はこの日の夜、小舟で海に出た。
