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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第9章 梅雨入りの午後(東峰旭)


スマホの録画機能を構えて、二人の入っていった空き教室にコッソリ忍ばせる。
「早速始めよう」
「せ、先生……私……」
「泣いても無駄だぞ」
「だって、こんな…こんなこと…」
「無理にでも始めるぞ」
「やぁっ!」
顧問がさんの服に手を掛けたところで、やっと身動き出来る。
怒りで手が震えそうなのを堪え、ゆっくり近付いた。
写真を数枚おさめ、そのまま背後に忍び寄る。
漸く、自分のこの見た目が役に立つ。
「何やってるんですか?」
「……っ!!!」
「今すぐ消したまえ!!」
スマホに気付いた顧問が俺を睨んだ。
「これを持って一緒に警察まで行きましょう。
もう、通報はしておきましたから」
先生はよくわからない捨て台詞を言いながら走って逃げていった。
「せ、んぱ…、通報はさすがに…」
「ハッタリだから大丈夫。
ちゃんと他に通してからにするよ」
さんは安堵したのか、膝から崩れおちるようにしゃがんだ。
「よか…っ、こわかった…っ!」
乱された服を整えてあげたかったのに、急に、どくっと心臓が脈を打つ。
その弱々しい姿が、そしてあまりにも綺麗な憂鬱な表情が、これでもかというくらいに好きで惹かれて。
驚くくらいに獰猛な自分がいたことを初めて知った。

放課後の保健室に、保健医はいなかった。
薬品のにおいと、じめじめを吹き飛ばすような空調が少し気持ちいい。
それでも汗ばんでいて、彼女は逆に冷えきっていて。
誰も見ていないカーテン越しなのをいいことに、思い切り抱き締めた。
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