第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
どうして、、、?
「痛いっ!離して!」
「ちょっと何すんのよ!」
「彼女の痛みはこんなものじゃなかっただろう!」
私は目の前の光景にただ茫然とするばかりだった。
どうして東堂くんが、、、?
今は部活中のはずだ。だからこの人達はここにいるんだ。
いつも東堂くんに絶対に見られないように、彼の練習中にこの人達は私を呼び出す。今日もそうだった。
呼び出されて、彼女達が飽きたら私を置いていく。
それで何が起こった?顔を洗いに手洗いへ歩いていたら彼女達とぶつかって。
そして、東堂くんが現れた。
「嘘、、、どうして」
だけど今、目の前にいる東堂くんは今まで見たことがないくらい怖い顔で怒っている。
私のことで怒っている。
「あの庭で何をしていたんだ?彼女の頬の傷はなんだ?朝は無かったはずだ」
指摘されて思わず頬に手をやる。
気がつかなかった。
手が当たるとツンと頬が痛んだ。
辛くなんてなかった。
もうすぐ居なくなることが分かっているから。
痛くなんてなかった。
本当に辛いのは、痛いことはこんな事じゃないから。
ただあなたが最後まで前だけ見ていられるように。
こちらを振り返らなくてもいいように。
笑って、ずっと笑って。
あなたが夢を叶える姿をただ願っていられるだけで良かった。
それなのに。
「何よ!私達の方がずっと応援してきてたのに!コイツと2人でコソコソ会ったりしてるからじゃない!」
「そうよ!どうせズルい手でも使って抜け駆けしてんでしょ!転校してきたばっかりで何も知らないフリして!」
違う。
「東堂様もちょっと調子に乗ってるんじゃないですか?チヤホヤされてるからって」
「色んな子に手出してるって噂されてますよ?」
全部違う。
騒ぎを聞きつけて人が集まる音がした。
東堂くんはそれでも手を離そうとしなかった。
「あ、人集まってきたけど、いいんですか?」
「レース出たいんですよね?」
やめて。
「あんたも何か言ったら?私達、あんたに何もしてないよね?」
「、、、ッ!」
私は飛び出して、東堂くんの手を掴んだ。
「やめて、ください。私は何も、されてないですから」
震える手を必死で押さえて、驚いて目を開く東堂くんに向かって笑った。
きっと東堂くんも笑ってくれるだろう。
いつものように。