第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
いつからだと聞かれたら、俺は返答に困ってしまう。
なぜ?と聞かれても、同じく俺は返答に窮するだろう。
それは彼女が教室で目が合うと、こっそり俺にだけ微笑んでくれるからかもしれない。
あの時、荒北と俺のファン達が言い合っているのを見て、2人笑い合った時かもしれない。
もしかすると彼女の頬に土が付いていた時かもしれないし、その土を取るために彼女の頬に触れた時かもしれない。
いや、もっと前。
彼女の声を初めて聞いた時かもしれないし、教室で彼女が震える手を必死で上げて、園芸係に立候補した瞬間だったかもしれない。
いつからか
彼女と目が合う。それだけで俺の心は弾み。
彼女が笑う。それだけで俺の世界が輝く。
いや、もういっそ。
彼女がそこに居る。もうそれだけで。
それは見るのと聞くのとでは大違いで。
こんなに愛おしいものがこの世に存在するなんて思わなかった。
大切だった。
あの日、俺の掌に風に乗って飛んできたスズランのように真っ白な、触れることすら憚られるほど大切な人。
それを、、、
「やめて、ください。私は何も、されてないですから」
彼女は真っ青な顔でそう言って笑う。
震える手で俺を掴んだまま。
よく見ると制服には無数の靴痕が付いていた。
一体、いつから、、、?
俺はどうして気づかずにいられたんだ?
「これは、、、私が1人で転んでできたものなんです」
彼女の指に力が入る。
「ほら、この子もこう言ってるじゃないですか。ってか私達がやったっていう証拠もないんだし。周りの人達も驚いてますよ。あの東堂様がこんなことするなんてって。だから早くこの手をどけて、、、」
ダンッッ!!!
「ふざけるな、、、!」
俺はニヤリと笑いながら馬鹿をほざく女子の言葉を遮って、その横にある壁に自分の頭をぶつけた。
「、、、ひっ!」
真っ白な壁に赤い筋が一本流れた。
「周りの人間?レース!?ハッ!?そんな事はもはやどうでもいい」
彼女より大切なものなんて、無いのだから。
「ッ!そんなこと言って、、、私を殴ったりしたら、あんただけじゃなくて、自転車部全員、試合になんて出られなくしてやるんだから!!」
福、荒北、すまない。
できるだけ迷惑をかけないよう努めるから。
今はただ、もうこれ以上、コイツらが彼女に近づくことができないように、、、
