第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
急ぎ学校に戻り、校舎裏へと走った俺は、目の前に広がる光景に愕然とした。
「ハァ、、、ッ、ハァ、、、ッ。これは、、、」
彼女が手がけた裏庭は、見る影もなかった。
踏みつけられた花々。掘り返された土。そこら中に散乱する彼女の字で書かれた花の名前。潰れたスズランの蕾。
その荒れ方は悪意を持って誰かがしたとしか考えられなかった。
バタバタ!
茫然とする俺の耳に騒がしい足音が聞こえた。
「ヤバっ!」
「何で東堂様が!?」
「誰だッ!?」
すぐさまその声を追いかけた。
「ハァ、くそっ!」
なかなか追いつかない。焦りで思わず舌打ちをした。
その瞬間、
「きゃっ!」
「うわっ!何よっ!」
「痛!」
「ってか土まみれなんだけど!」
廊下の先で
ドンっ!と何かがぶつかる音とともに、聞き覚えのある声が悲鳴をあげた。
急いでその場へ向かうと、笹原さんと女子が数人倒れていた。
「あ、東堂様、、、」
女子達は怯えた表情でこちらを振り向いた。
その顔触れには見覚えがあった。いつも最前列で応援をしてくれていた子達だ。
「なぜ、、、」
状況から俺が追いかけていたのはきっと彼女達だ。
つまりあの庭をあんな風に荒らしたのは彼女達で。
「あーもう最悪!アンタって本当にムカつく!」
「こんなトコでも邪魔してくるとか、マジで目障り」
「あ、あの、、、」
荒北が言った笹原さんに嫌がらせをしていたというのもきっと。
「どけよっ!」
「あっ」
1人が笹原さんの肩を押して彼女はよろめき、壁にぶつかった。その瞬間、頭が真っ白になった。
「待て」
「痛ッ」
気づけばそのまま去ろうとする肩を俺は力いっぱい掴んでいた。
俺は基本的に来るものを拒まない。
どんな者でも自分を好きになってくれるならば大歓迎だ。
相手が自分を愛してくれるならば、俺も出来る限りの愛と感謝を相手に返す。もちろんいつだって笑顔で明るく振る舞うべきで。
今だって悲しかったんだ。荒北から話を聞いた時からずっと。
どうしてと、話し合えば何とかなるんじゃないか、
最後までそんなことばかりが頭に浮かんで。
「なぜ、こんなことをする?」
俺は相手が女子であることも忘れ、力いっぱい掴んだ肩を壁に押し当て、その目を捉えた。