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恋の話をしよう【弱虫ペダル】短編集

第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎


変化が起きたのは、その翌日からだった。


朝、靴箱を開けた時、

「あれ?」

上履きが入っていなかった。


「え?え?どこ行ったんだろ?」


昨日確かにちゃんとここにしまったはず。
周囲を見回しても無かった。
あと考えられる場所。考えたくないけれど、もしかして。

「、、、あっ!」

考えたくなかったけれど、私の上履きは下足室のゴミ箱に捨てられていた。ボロボロに切られて。


「、、、」

「ソコ、ジャマなんだケド」

「す、すみません!、、、あ」


ゴミ箱の前で固まっていたから、誰かの邪魔になっていたみたい。
振り返ってみて驚いた。

「何?」

不機嫌そうにそう言ったのは、東堂くんといつも一瞬に練習している荒北くんだった。

「いえっ、何でもないです」

反射的にボロボロになった上履きを背中に隠す。

「、、、あ、そ。っつか、何で靴下?」

荒北くんは、興味があるのか無いのか分からないくらいの気怠さで聞いた。
その質問にドキリとして思わず目を逸らす。


「あ、、、えっと」


どうしよう。
荒北くんに言ったら多分東堂くんにも伝わる。
優勝するために頑張ると言った東堂くん。
そんな彼に余計な心配をかけるわけにはいかないと思った。


「実は昨日持って帰ってしまって、、、」


ドキドキと変な風に鳴り続ける鼓動を抑え込んで答える。
大丈夫。ちゃんと笑えてる。

「金曜日でもないのに?」

「それは、その、、、そう、私もう週末の気分だったので、、、」

荒北くんが私の答えに一瞬目を開いて怪訝な顔をする。
やっぱり、無理がありますよね、、、?


「ふーん、、、ま、どーでもいいけど」


答えに窮して黙り込む私にすぐに興味を失ったのか荒北くんの視線は教室のほうへ移った。ホッと胸を撫で下ろす。
その背中が見えなくなるのを確認してから、私は上履きを鞄にギュッと押し込んだ。


大丈夫。
こんなことには慣れている。

大丈夫。
きっと誰かの気紛れだ。



私は気を抜いたら震えてしまいそうになる足をギュッとつねって、来客用のスリッパを履いた。

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