第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
浮かれすぎていたんだと思う。
「笹原さんはすでに色々できている」
あれから1か月。
彼の言葉を思い出す度に嬉しくて、授業中も集中できない日々が続いていた。
「、、、またここに来てもいいか?」
ダメダメ。
違う。そんなんじゃない!
そうやって高鳴りそうになる胸を必死で抑えようとするのに、彼は毎日のようにこっそりと裏庭にやってきた。
「今日も綺麗だな!」
分かっている。
東堂くんは花を見に来ている。
彼は、お母さん譲りで昔から花が好きだと言っていた。
ただそれだけだ。
東堂くんは色んな花の話をしてくれた。
それが私には楽しくて、私はこっそりと花に語りかける。
明日はもっと綺麗な姿を見てもらおう。
そんな練習の合間のほんの少しの時間はあっという間に過ぎて、
「今日も楽しかった。ではまたな!」
なんて言ってくれるから、
また、があるんだ、、、。
と私の胸は休む暇もなくて。
「はい!明日も待っていますね!」
なんて、ふやけた顔を取り繕う余裕もない。
だから気が付かなかった。
私には見えていなかったんだ。
本当に、色んなことが分かっていなかった。