第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
「フン、、、まったく」
この子にならば弱い姿を見せてみてもいいかもしれない。
そう思ったところだったというのに。
「俺がこんなに調子を狂わされるなんて初めてだ」
「え?」
「、、、だが、悪くない」
溜息を吐きながら、目を丸くする彼女に近づいた。
「あ、あの、東堂くん?」
一歩、また一歩とゆっくりと歩を進めると、驚いたように彼女が後ずさった。
そして
「あっ!」
彼女の背が校舎の壁に当たり、もう下がれなくなったところで、手を伸ばす。
「しかし、俺を応援するならば、その頬についた土を落としてからにしてほしいものだな」
「えっ!!」
驚いて、まだ土がついたままの軍手で頬に触れようとする彼女の手を静かに払いのけて、
「そんな顔で応援されては、俺の気が散ってしまう」
柔らかなその頬に付いたザラザラを撫でるように落とした。
「それともまさか、君は他校のスパイで、俺を笑わせて優勝させない気なのか?」
冗談混じりに放った問いはもちろん、軽い返事を期待して。
「、、、」
それなのに、いつまで経っても返事がない。
「ん?」
気になって彼女の顔を覗きこむと、
「、、、っ」
トマトのように赤い顔と目が合った。
、、、な、何だ?
こういう時、女子は普通、「きゃあ、東堂くん、近い〜!」とか、「スパイだなんて!ヒドイ〜!」などと言うものではないのか?
というか、先程までは饒舌に話していたではないか!
というか、俺もおかしいんじゃないのか?
何、固まってる?
こういう時こそ、いつものトークで盛り上げるべきだろう!
というか!何だ、どうして、こんなに心臓が早い!?
どうして、、、この、彼女の戸惑い赤くなった顔が、、、
言葉にできないほど
可愛い、だなんて。