第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
「それなのに今日はどうしたんですか? ちゃんと練習しないと、優勝なんかできませんよ!」
「、、、」
彼女の言葉にただただ呆けていると、
「、、、はっ!すみません!何で私なんかにそんなこと言われないといけないんだって感じですよね!っというか、あの決して偉そうに言うつもりはなく、、、でも東堂くんが毎日走っている姿を見るのが私も好きで、、、って、いえっ、私、毎日東堂くんを見てたとかそんなのではなくてっ。あーもうっ!東堂くんが思ったよりも話しやすいからって、どうして何でも言ってしまうのか!!」
彼女はハッとしたようにその赤くなった頬に手をやった。
そんな彼女と目が合う。
彼女は一瞬目を逸らしたが、戸惑いながらも真剣な顔でこちらを見上げた。
「、、、っ。でもっ、その、私あの日、東堂くんがインターハイ優勝するって言っているのを聞いて本当にすごいなって思ったんです!それで、えと、応援したいというか、憧れるっていうか、東堂くんの頑張る姿を見ていたらなんか私にも何かできそうな気がして、だから、その、本当に頑張ってほしいというか、、、えと、、、」
「ふっ」
教室では見ないその焦りように思わず笑みが零れた。
「笹原さんは色々と勘違いをしているようだな」
「え?」
「笹原さんはすでに色々とできている。あの雰囲気の中で手を挙げて、毎日ちゃんと水をやって、こんなにも綺麗な花を咲かせているではないか。それに、、、」
それにこんな俺にも、
枯れてしまいそうなこの心に、恵の水のような言葉をくれた。
なんて、そんなことは言えないけれど、君になら、、、。
「実は俺は、、、」
重い荷物を下ろすように口を開き、
彼女を見つめた瞬間、
「って、ぶっ!何だそれは!!」
彼女の顔を改めて見て、俺は思わず吹き出した。
「えっ?えっ?何ですか?」
それは軍手に付いた土が、彼女の頬にビッシリとついていたから。