第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
思わず、漏れそうになった溜息を、
ハッと気づいて慌てて飲み込んだ。
横目で伺うと、笹原さんが不安げな表情を浮かべている。
っと、危ない。
この俺が、弱音を吐きそうになるなんて。
女子を不安にさせるなど、そんな俺は俺ではなかろう。
顔を上げて彼女に見せたのは、
「しかしここは綺麗に手入れされていてなかなかだなモノだな!笹原さんが手入れをしてやっているのか?」
いつもの俺。
大丈夫だ。
できている。
俺が笑えばほら、彼女もきっと
「は、はいっ!、、、って、え?」
笑ってくれる。
と思ったのだが、、、、彼女は不思議そうに俺を見た。
「ん?どうかしたか?」
もしかして、、、いつもの顔ができていなかったか?
焦る内心をごまかして、できるだけ落ち着いて尋ねた。
「あっ!いえ!えと、、、私の名前知って下さっていたんだなと、、、」
って、あぁ、何だ、そういうことか。
ホッと胸を撫で下ろして、自信満々に答えた。
「当たり前だ!女子の名前は忘れん!」
って、、、
違う。
そういうことが言いたかったのではないのだ。
言いたかったのはもっと、、、
あの日見た君の優しい姿に心打たれたこと。
いつもの俺なら言えるのに。
出てきた言葉は少し違って。
「あ、、、そう、ですよね」
訂正をしあぐねている間に、彼女の気持ちはシュンと萎んで。
こんなことは初めてだ。
どうして言いたいことすら、まともに言えないのだろう。
、、、やはり、俺は何かがおかしくなってしまったようだった。