第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
そう彼女は、笹原さんだ。
あんな声だったのか、、、。
彼女の声は、あの日以来聞いていない。
クラスでも大人しく、教室の端っこの席でいつも俯いて。
どれだけ俺の周りで女子達が騒いでいても、彼女の周りだけはただ静かで。
誰かと話しているところなんか見たことがない。
あんな顔もするのだな。
俺が見る彼女はいつもどこか緊張していて、常に周りに気を遣っているようで、、
しかし今の彼女はとてもリラックスした微笑みを浮かべている。
艶のある長い黒髪がサラサラと風に揺れて、美しい花々を優しくかすめる。
彼女に見つめられる花々もまるで彼女を見返して微笑んでいるようで。
美しかった。
彼女の醸し出す空気がフワフワと優しい光に包まれて。
思わず、見惚れてしまった。
誰とも話す気分ではなかったのに。
思わず足が動いていた。
「ホントに綺麗、、、」
綺麗な声で彼女が呟く。
「そうだなっ」
思わず話しかけていた。
「へっ、、、!?東堂くん、、、!?」
突然のことに、飛び跳ねて驚く彼女。
少し申し訳ないとも思ったが、その姿はとても微笑ましくて。
「あ、あの、えと、どうしてここにいるんですか?」
「ん?俺がここにいてはまずかったか?」
とわざと困らせるような質問をしてみたり。
「あ、いえ!全然そういうわけじゃ、、、」
「そうか。では少しだけここに居てもいいだろうか?」
「は、はい!もちろん!」
彼女の許可を得てから、その隣にしゃがみ込んだ。
「本当に綺麗だな」
目の前にはただ色とりどりの花々が広がって。
騒ぐわけでもなく、話しかけてくるわけでもない、そんな彼女の隣が今は心地よくて。
少し魔が差したのだ。