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恋の話をしよう【弱虫ペダル】短編集

第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎


ただ少し魔が差したのだ。


最近の俺はおかしい。
調子が狂い出したのは新学年になった頃からか。


一分の無駄もない俺の走りができなくなった。


「ハッ、、、く、、、ハッ」


走っても走っても。
何かに追われている感覚が拭えない。
疲れが泥のようにまとわりついて、この足を鈍らせる。
こんなことは初めてだ。


プレッシャー?
は、まさか。


俺がそんなものに飲まれるはずがないだろう?


福が作る新しい箱学は最強だ。
俺も含めて。
その俺は最強でなければならない。
いつだって何ものにも負けない強い身体と精神を持っていなくてはならないのだ。



そして重くのしかかってくるそれを追い払うかのように今日も俺は声援に応える。


「登れる上にトークも切れる!更にこの美形!天はオレに三物を与えた!!箱根の山神天才クライマー東堂とはこの俺のことだっ!!よろしく!!」


「きゃー!東堂くん、頑張って〜!!」

「カッコイイ〜!」


そうだ。
こんなに応援してくれている彼女達の期待に応えなければなるまい。
俺はいつだってカッコよく、強くなくてはならない。
その為にトレーニングも食事も生活リズムだって整えてきた。


「こら、東堂!練習中だろーが!早くしろ!」


あぁ、荒北。分かってる。


「おぉ、荒北!そーんなに俺と走りたいのかっ??仕方あるまい!それじゃあ、そういうことなのでなー!応援ありがとう!!」


ファンクラブの女子達に手を振って、校門を出る。
すると、荒北がスッと隣についた。


「オラ、東堂。大口叩いたからにはちゃんと付いてこれンだろーな?」

荒北の瞳が鋭く光る。
奴なりに俺を鼓舞しているつもりだろう。
、、、もちろん、当たり前だ。

「ハ、、、!荒北、つい先日まで初心者だったお前に付いていけないようでは俺も終わりだよ」

大丈夫だ。
こんなものすぐに振り払ってやる。
このチームと巻ちゃんの為に。
何よりこの俺の為に。


今年が最後なんだ、、、。



「大差をつけてお前を引き離してやろう!!」



なぁ?
それなのに、なぜだ。



「ハッ、、、く、、、ハッ」


なぜ、追いつけない。


「東堂、、、今日はもういい。戻れ」


なぜだ、福。
俺はまだ、10分も走っていない。


「、、、分かった。すまない。」


なぜ、言い返せないのだ。
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