第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
「というか、あの、東堂くんはさっき自転車の練習に行ったのでは、、、?」
話題を変えようと、ずっと気になっていたことを尋ねるとニヤリと笑う東堂くん。
「アッハッハ!舐めてもらっちゃ困る。俺は天才だぞ!学校前の練習コースなんて、10分もあれば帰ってこられる!」
そ、そういうものなのだろうか?
「あの、けれどまだ練習があるんじゃ、、、早く帰ってこれたとしても待っていなくていいんですか?」
オドオドと尋ねると、東堂くんはいつも通り笑ってこう言った。
「俺は天才だからな!」
「、、、えっと、、、」
天才だったら、いいのだろうか?
「そういうものなんですか?」
「そうとも!なぜなら登れる上にトークも切れる!更にこの美形!天はオレに三物を与えた!!箱根の山神天才クライマー東堂とはこの俺のことだからな!」
生き生きとした顔で東堂くんは言った。
正直、部活をしたことない私にはその辺りのことはよくわからない。だけど、
「、、、ぷっ」
なんだ、いつもの東堂くんだ。
安心した途端、やっぱりその答えは何だかおかしいような気がして。
「くすくすっ」
私は笑いを堪えることができなかった。
「むっ!何を笑っている?本当のことなのだぞ?」
東堂くんがむっとする。
本当に申し訳ない。なんて失礼なんだろう。
けれど不満げに顔をしかめる彼の顔がまた可笑しくて。
「ご、ごめんなさい。あの、東堂くんがスゴイことはすごくよく分かっているんです!ケドやっぱり、、、ふふ、東堂くんが面白くて、、、」
「むむ!何のことだ?」
「えと、なんというか、、、東堂くんはずるいと思います」
「は?ずるいっ!?この俺のどこがずるいというのだっ!」
そのコロコロと変わる表情に、彼のこんな一面を知っているのは私だけなんじゃないか。なんて。
「ふふっ、強いて言うなら全部かな」
けれど、きっとあなたがこうして話してくれるのは
ただ名前を知ってる女子っていうだけの理由であって。
特別な理由なんて有りはしないのに。
もっと話をしていたいだなんて思ってしまいそうで怖いけれど。
ただ、今は、
「俺は何かおかしなことを言ったか?」
そう目の前の花々に問いかける彼をもっと見ていたいと思った。