第2章 ふたりの距離
両手いっぱいのコンビニ袋。
今思えば、組の人間を使って買いに行かせればよかったと、
マンションのエレベーターに乗りながらため息をついた。
だったらこんな惨めな思いしなかったのに。
それとも昨年同様、金で買える一時の幸せを選んだ方がよかったのか。
馬鹿騒ぎしては自分が世界一強いと豪語して女達に持て囃され、
高い酒を浴びるほど飲んで時間を過ごす。
だが、真島にはそういう遊びには何の楽しみも感じていない。
だから今、独りでいる。
そのほうが日々血生臭い生活から距離を置けるからだった。
真島の乗ったエレベーターが最上階にゆっくりと止まって、自動ドアが開く。
コンビニ袋を両手に抱えエレベーターを降りると、1番奥の角部屋へ向かって歩き始めた。
カツンカツンと足の裏に鉄板が入った真島の靴の音が通路に響く。
その時、自分の部屋の前に人影を感じた。
真島の家を知っているのはごく一部の人間のみ。
来客など滅多に来ないはずなのに……。
「……」
部屋の扉の前で膝を抱え、小さく体を丸めて座る人物を見た時、真島は足を止め目を丸くして驚いた。
その足元には小さな白い箱。
箱を包むようにリボンで結ばれていて、
箱の側面にはメリークリスマスと筆記体でプリントされている。
立ち尽くす真島の気配に気づいた人物が、その場から立ち上がり真島を見つめた。
互いの視線がぶつかった頃、
神室町に粉雪が降り始めていた。