第2章 ふたりの距離
「いつから待っとったんや?」
「……20分ぐらいです」
真島は部屋に招き入れた客に、温かいコーヒーを入れて上げた。
テーブルには湯気が昇るコップが2つ。
その離れた距離が2人の関係を表していた。
「本当は帰ろうかと思ったんですけど、待ってたらそのうち帰ってくるかなって……」
そう言って、ソファーの隅に座る真島にいただきますと小さく頭を下げて、コップに手を伸ばしたのは雅美だった。
「俺コンビニ行っててん。きっと入れ違いやったんやな」
真島は足を組みながらコーヒーを飲むと、ソファーの前にあるガラスのテーブルにコップを置いた。
「俺が帰ってこんかったら、自分どないするつもりやったんや」
「わからないです。そのまま待ってて、あまりにも寒くて凍え死にしてたかも」
苦笑いする雅美に真島はアホかと突き放した。
「そないな事したら、雅美ちゃんが体壊すやないか」
真島は雅美を見ようとしない。
そしてどこか冷たいそぶりに雅美は不安げな表情を浮かべて、真島の横顔を見つめた。
「まぁ、体壊しても看病してくれる人間がおるさかい。気にせんでもええか」
こんな事が言いたいんじゃない。
せっかく家に来てくれたんだから、見つめ合って話がしたいのに。
真島の心は大きく揺れ動いていた。
心の中にある気持ちと頭の中にある感情が全く裏腹で、
自分が言った言葉に刺があることもわかっている。
でも少し強がったそぶりを見せないと、今にでも雅美に強く問い詰めそうだった。
涙のワケ。
男との関係。
眼帯で左に座る雅美の様子は見えないが、間違いなく不安げに違いない。