第1章 招かれざる客
〈敦side〉
暫く口を閉ざしていたのを気にかけてくれたのか愛理さんが声を掛けてきた。
『そこまで高級なものじゃないよ?……あ、ワインは知らないけど。』
「心読まれてる!?……って愛理さんのものじゃないんで「ただいまー。」」
突然話を遮った声にまたもや驚き慌てふためいているとその声の主がリビングのドアを開ける。
「来客なんて珍しいじゃねェーか。…………ってあァッ!!?何で青鯖と手前が居ンだよ!!」
声の主はこともあろうかポートマフィアの中原中也さんだった。
今は停戦状態の為大事にはならない筈だが此の状況は拙い。
「矢張り同居人は中也だったのだね。」
『えぇ、そうです。』
「でっ、でも幾ら停戦状態とはいえ大丈夫なんですか!?」
『社長と与謝野さんにはきちんとお話してあるしそれに停戦前から同居してるのよ?』
クスクスと笑ってみせる愛理を余所に今最もこの状況を理解出来ていないであろう人物が再び口を開く。
「だから何で手前等が居るンだよ!!特に手前だ!!太宰!勝手に家に上がり込ンでンじゃねェ!」
「えぇ〜?ちゃんと家主の許可を貰ったから正当に居るのだけれど。」
「ぐッ……。」
「それよりこんな小っさい帽子と住むよりも私と住もうよ〜。あ!勿論結婚前提でね!」
正論を云われぐうの音も出ない中原さんを放って太宰さんは愛理さんを口説き続ける。
「身長も私の方が高いよ!肩車で色んな人を見下ろせるよ!」
「其れアピールポイントになってないですよ。」
「こんのォ……黙ってれば調子に乗りやがって。太宰!!表に出ろ!!今日こそ手前を殺してやる。」
今にも殴りかかりそうな中原さんをまぁまぁ、と愛理さんが宥めるとチワワの様に大人しくなった。
あぁ、中原さんも流石に愛理さんには叶わないんだな。と僕は悟る。