第1章 招かれざる客
自動昇降機に乗り十二階まで来ると1201号室と書かれた扉のインターホンを鳴らす。
この十二階には最上階だからか二室しかないようで自動昇降機を降るとエントランスに出て右が1201号室、左が1202号室となっていた。
一体どれだけ豪華な部屋なのだろうと敦が考えていると渦中の人が姿を見せた。
『お話は後で聴きますからとりあえず中へどうぞ。』
「おっ邪魔っしまぁーす♩」
「お邪魔します…」
対照的な挨拶をした二人は『此方にお座り下さい。』とリビングのソファーに案内される。
敦は太宰の隣へ腰を下ろすと後の祭りではあるが一応の謝罪を入れる。
「すみません、突然押し掛けてしまって。」
『どうせ太宰さんに無理やり連れられて来たんでしょう?其れにいずれバレると思ってたから敦君は気にしないで。』
まるで全てを見ていたかのように云い当てた彼女はキッチンで珈琲を注ぎながら微笑む。
すると突然、そうだ!と云い微笑んだままの表情で太宰に顔を向ける。
『武装探偵社内で真逆のストーカー事件!犯人は同僚の女性と心中しようと目論み家を特定。脅迫し部屋に上がり込んだが偶々近くに居た別の同僚のお陰で返り討ちに遭い死亡。ってところですかね?』
「うーん、私は是非愛理ちゃんに殺して貰いたいところだね。日頃からストーカーしていたという事実も無い。其れに過剰防衛ではないかい?」
『太宰さんも私と心中しようとして来てるんですから立派な殺人ですよ。其の証言なら日頃から会話を耳にしている探偵社の皆さんがしてくれるかと。』
「成る程ね。」
「どんな物騒な話をしているんだ、この人達は…。」
たった一人の常識人である敦は呆然としながらも突っ込むと部屋を見渡す。
二十畳程有るリビングの中央にテーブルを挟むようにして対に置かれたソファー。
其の後方の壁にはワインセラーが置かれてあり、横にはカウンターキッチン。
手入れされている所を見ると日常的に料理をしているに違いない。
見たことも無いスパイス迄並んでいる。
屹度此処に在るものは全てお高いのだろう。と敦は恐る恐る部屋を見渡していた。